2017年電験1種 電力問3

系統保護リレーシステムは、電力系統の安定運用を維持するための重要な役割を担っており、系統事故様相をよく把握し、絶えず保護性能の改善に努め、設備形成や系統運用計画と十分協調のとれたシステムとしていくことが必要である。

送電線に事故が発生した場合には、事故除去リレー装置により事故区間を高速度に遮断した後に自動的に再閉路を行うことで、大部分の事故は正常系統に復旧する。しかし、万一、多重事故や設備損壊などにより、再閉路が成功しないに際事故波及防止リレー装置により自己波及を局限化する。その後、系統操作により正常系統に復旧する。

事故除去リレー装置のうち、事故区間を高速かつ確実に遮断できる方式として、PCM電流差動リレーが挙げられる。事故除去リレー装置では、系統事故を速やかに検出し、健全な電力系統から事故区間を確実に切り離すために、様々な信頼度向上策が講じられている。特に基幹系統では、多系列化により保護の確実化を図っている。

しかし、事故除去リレー装置の動作失敗や遮断器不動作事象の発生による事故除去時間の遅延、さらには大規模電源の経つ楽や事故除去区間の広範囲化により、系統脱調、周波数異常、電圧異常や設備過負荷などの種々の異常状態を引き起こすことがある。この影響を系統全体に波及買う台数のを防止し、電力系統の安定運転を維持するのが事故波及防止リレー装置の役割である。

なお、再閉路方式の選定にあたっては、一時的な無電圧・欠相状態の発生による過渡安定性のほか、火陸機や原子力機の軸ねじれの問題を考慮する必要がある。

【解説】

空中絶縁である送電線において、雷による1線地絡事故が多く、事故除去リレーで事故を墨y化に検出し遮断器で事故電流を遮断すれば自然に絶縁が回復するので、しばらく時間が経過した後に再度自動的に使用する再閉路が用いられている。再閉路が成功すれば、系統は正常に復帰することができるので、停電時間の短縮が図れる。また、直接接地系統では地絡電流が大きいため、高速度の保護リレーと各相遮断機の組み合わせによる事故継続時間の短縮健全相による1秒程度以内でのふっきゅうにより電力系統の過渡安定性向上にきわめて重要な役割を担っている。再閉路が失敗した場合、送電可能電力が低下してしまうので、発電機の加速又は原則により脱調現象などがはっせいすると事故が広域に波及してしまう可能性がある。この対策として自己波及防止リレー装置により事故波及を局限化している。

事故除去リレー装置のうち事故区間、事故相の判断を確実にかつ高速に行うことができるものは電流差動リレー方式である。保護区間流入する電流と流出する電流の差(差動電流)を監視するもので、通常の負荷電流通過時や保護区間外部事故電流の通貨では流入電流を流出電流は等しく差動電流は零であるが、保護区間内で事故が発生した場合は差動電流が発生する。各相単位で作動電流を検出することで、相毎に内部事故の有無を検出できるので、各相遮断機を適用することにより、単相再閉路方式、多相再閉路方式が実現できる。送電線は変圧器などとは違い、保護する区間が電気所間にまたがるため、各端子の電流情報を同期サンプリングしてディジタル値に変換し、通信によりリアルタイムで互いに伝送して演算や監視を行っている。この方式でよく用いられるものは、PCM(Pulse Code Modulation)電流差動方式である。

保護リレーは系統事故の速やかな除去や事故波及の防止など電力供給システム全体の供給信頼度を確保する上で極めて重要な債務を担っているため、保護リレーシステム自体にも高信頼度が要求される。特に基幹系では保護リレー装置の単一故障でお互機能が喪失し、保安確保上保護対象設備を停止せざるを得なくなったり、事故除去に失敗したりして事故除去が遅延することに伴う瞬時電圧低下の影響増大、停電範囲の拡大を招くため、複数の保護リレーにて保護を行う多系列化を施している。

事故除去が失敗するケースとして、事故除去リレー装置の動作失敗(誤動作)やリレー装置が正しく動作しても遮断器が動作できない遮断器不動作事象の発生が考えられる。この場合、系統の広い範囲に事故影響が波及してしまう可能性があるため、事故波及防止リレーにて事故影響が拡大するのを防止している。

火力機や原子力機などの回転体を有する者は系統事故時のトルクの過渡的変動により発電機と原動機の速度差が生じて軸ねじれ減少が発生する可能性がある。過渡安定性の他に軸ねじれ現象も加味して保護リレーや再閉路方式の先手が必要となる。