2018年電験1種 電力問1

ある出力で運転中の水車発電機を系統から解列することを負荷遮断というが、解列すると調速機の応答によりガイドベーンが急閉し、水撃作用によって水圧が上昇するとともに過渡的に水車入出力のバランスが崩れて回転速度が上昇する。

特に、揚水発電所で用いられるフランシス形ポンプ水車の場合は、流量一回転速度特性により、単に水圧上昇が大きくなるだけでなく、ガイドベーン閉鎖方法によっては、ポンプ水車は逆転ポンプ域に大きく入り、流量が急激に変化して水圧菅水圧が異常に上昇する可能性がある。また、サージタンクのない長大放水路をもつポンプ水車では、ランナ出口下端において圧力が異常に低下して、水柱分離が発生する可能性もある。この現象を避けるため、ガイドベーン閉鎖速度を途中から遅くして2段あるいは3段操作を行っている。

【解説】

発電運転中の水車発電機に負荷遮断が発生すると、水車発電機の出力が急変して零になるが、水車の入力の方はほぼ一定に維持され、過渡的に水車入出力のバランスが崩れて回転速度が上昇する。この回転速度の上昇を抑えるために、調速機が応答してガイドベーンを急閉する。ポンプ水車の負荷遮断時は水車方向の流れを急激にしぼったことで、放水路の流れが急激に減少し、放水路、特に吸出し管内の圧力が低下するが、このときのガイドベーンへいさじかんや吸出し高さの値によっては、放水路流水の慣性効果と水車ドラフト旋回流とによってランナ直下に局所的な水圧高架部分ができ、これが蒸気圧以下になると空洞が発生する。これを水柱分離げんしょうといい、この空洞が消滅して水柱が再結合するときに異常な圧力上昇が発生し、吸出し管などの設計圧力を超える場合がある。このため、放水路が長く、かつ放水路のサージタンクを省略したポンプ水車では、ある程度の流水を継続して放水路の水圧低下を抑えるようにガイドベーン閉鎖速度を途中からゆっくり閉じる。2段あるいは3段の閉鎖操作を行っている。これらの水路系過渡現象は、コンピュータによる過渡現象計算で精度良くかいせきできる。