火力発電 6.熱伝達

一つの物体からほかの物体への熱の伝達は放射、伝導および対流で行われる。これらは単一で行われることはきわめてまれで、多くは同時に行われる。

 

1.放射

物体は、それよりも温度の低いほかの物体の近くに置かれると、その温度が下がる。このように、中間に介在する物質の媒介なしの熱の伝達は放射と呼ばれる。

物体から放射によって失われる全エネルギーは

E_b=\sigma T^4 [ W/m^2 ], \sigma = 5.67\times 10^{-8} \mathrm{W/m^2\cdot K^4}

で表されステファン・ボルツマンの法則という。\sigmaをステファンボルツマン定数T絶対温度である。

 

2.伝導

分子の熱運動が分子から分子へと伝わって移動する熱伝達を伝導という。物体の高温部の温度をt_1 [\mathrm{K}]、低温部の温度をt_2[\mathrm{K}]とすると、伝達面A[\mathrm{m^2}]によって伝導される熱量

Q=\alpha A (t_1-t_2)[\mathrm{W}]

と表され、\alpha [\mathrm{W/m^2\cdot K}]は熱伝導率である。

壁面を通して一方の流体1から他方の流体2へ熱が流れることを熱通過または熱貫流という。

 

3.対流

熱が物体の移動に従って伝達される過程は対流と呼ばれる。これは流体だけにおこる現象である。

一般に熱を受けて温度が上がり、比重が軽くなった部分は上昇し、その後に温度の低い比重の大きい流体の部分がが移動する。このような流体の運動を自然対流という。

 

流体の場合には熱伝導率が低く、しかも温度による比重の差が大きく、移動しやすい性質をもっているので熱量の移動は対流による伝熱が主となっている。自然対流に対し、外力により強制的に流体を移動させる現象を強制対流という。