火力発電 4.蒸気の性質

水を熱すると水温は上がって沸点に達する。このために費やされた熱量は顕熱という。沸点に達した水をさらに熱しても水温は上昇せず、加えた熱量は水を蒸発させるために消費される。この熱量は潜熱という。

沸点は気圧によって変わり、圧力が増すと沸点が高くなるが、その間には一定の関係がある。この沸点温度はその圧力に対する飽和温度と呼ばれ、飽和温度に対する気圧は飽和圧力と呼ばれる。ある圧力に対し飽和温度にある蒸気は飽和蒸気と呼ばれる。蒸発中に発生した蒸気には、きわめて微細な水滴が含まれる。このような蒸気は湿り蒸気と呼ばれる。これに対し、含有水分のない蒸気は乾き飽和蒸気と呼ばれる。湿り蒸気1\mathrm{kg}中にx[\mathrm{kg}]の飽和蒸気が含まれ、(1-x)[\mathrm{kg}]が水分であるとき、その蒸気の乾き度はxであるといい、湿り度は1-xであるという。

 湿り蒸気は加熱されると乾き飽和蒸気になるが、これはさらに過熱されると一定圧力の状態においては、加えた熱量に比例して温度が上昇する。このような蒸気は加熱蒸気と呼ばれ、その温度とその圧力に相当する飽和温度との差は加熱度と呼ばれる。

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図の圧力P、比体積vのP-v線図では1-2線上を飽和水線、3-4線上を飽和蒸気線といい、両者を合わせて飽和線という。図で1-2と3-4の間が湿り蒸気である。

この二つの飽和線1-2と3-4は圧力が高くなるにつれて接近し、最後に点Kで一致する。この点を臨界点といい、その温度、圧力をそれぞれ臨界温度、臨界圧力という。水の臨界点の圧力、温度は22.1[\mathrm{MPa}]374^\circ\mathrm{C}である。臨界温度よりも高い温度では凝縮液化しない。飽和液線の左側の領域では過冷却駅の状態で、飽和温度よりもさらに温度の低り駅で、この状態の液可冷却液という。ある圧力のもとにある液の飽和温度とその圧力のもとにある過熱蒸気温度と本和温度との間の温度差を過冷却液の過冷却度という。

乾き飽和蒸気線の右側の領域は、飽和温度よりも温度の高い過熱蒸気の状態を示し、ある圧力のもとにある過熱蒸気温度と飽和温度との間の温度差を過熱蒸気の過熱度という。

臨界圧力以上を超臨界圧力といい、現在の大容量汽力発電のほとんどは超臨界圧力強制貫流ボイラを採用している。