火力発電 5.熱の機械エネルギーへの変換

1.熱サイクルの効率

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絶対温度TエントロピーからなるT-s線図において、 点Aから始まって点Bを経て、異なった経路を通って再びAに変えいる図の熱サイクルにつき、その変化曲線中の一点Cにおいて微小部分dsを考えれば、高さT、幅dsの面積はTdsである。dQ = T dsであるから、AからCを経てBに変化する間に与えられた全熱量は

\displaystyle{Q_1= \int_A^B T ds}

となり、面積aACBbに等しい。また、BからDを経てAに帰る変化をする間に与えられた全熱量は

\displaystyle{Q_2=\int_B^A Tds = - \int_A^B Tds}

となり面積aADBbに等しい。したがって、Aを起点としてBを過ぎ、再びAに変える循環回路において与えられた総熱量

\displaystyle{Q=\int_A^B T ds + \int_B^A Tds}

であって、面積ACBDAに等しく、サイクル内の面積に等しい。ゆえに熱サイクルの効率は面積ACBDA/面積aACBb である。

 

2.カルノーサイクル

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 絶対温度TエントロピーからなるT-s線図において、DAは断熱圧縮、ABが加熱による等温膨張、BCが断熱膨張、CDが放熱による等温圧縮であり、等温変化と断熱変化との2過程ずつが組み合わされた熱サイクルである。この熱サイクルにおいて、受熱源の温度をT_1、放熱源の温度をT_2とすると、熱効率は

\displaystyle{\eta_C = 1-\frac{T_2}{T_1}}

で与えられる。

カルノーサイクルは受熱源と放熱源との温度差が一定であるときは、種々の熱サイクルの中、最も効率のよいサイクルである。しかし、この熱サイクルの過程中の等温膨張と断熱圧縮との両過程は実現が困難であるので、この熱サイクルの実用の可能性はない。しかし、なるべくこの熱サイクルに近づけて、効率を上げるように工夫することが大切である。

 

3.ランキンサイクル

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 水と蒸気のT-s線図を示したもので、自ら蒸気への状態変化があるので、等圧線はa_1,b_1,c_1,d_1およびa_2,b_2,c_2,d_2のようになっている。水が蒸発を始める点を結んだb_1b_2b_3は飽和水線、蒸発の完了する点を結ぶc_1c_2c_3は飽和蒸気曲線である。

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 図はランキンサイクルの説明で、

(1)断熱圧縮  \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\,の状態にある飽和水がポンプでボイラ内に送り込まれる。その状態変化が \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 2}\,\,で、ポンプで水を断熱圧縮する。

(2)等圧受熱 ボイラに送り込まれた水は、その中で等圧受熱し、飽和状態となり、さらに熱を受けて乾き飽和蒸気から過熱蒸気 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\,に至る。

(3)断熱膨張 過熱蒸気 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\,の状態でタービンに送り込まれ、断熱膨張して仕事をする。蒸気は圧力、温度ともに下がり、湿り飽和蒸気 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 4}\,\,となる。

(4)等圧放熱 タービンから排出された湿り飽和蒸気は復水器に入り、放熱して飽和水 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\,に戻る。

 

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 2}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 4}\,\,の各状態におけるエンタルピーをi_1,i_2,i_3,i_4 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 2}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 4}\,\,および \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\, \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 4}\,\,baの面積をAW,Qとすれば、ランキンサイクルの理論熱効率\etaは、給水ポンプの仕事(i_2-i_1)とボイラの熱供給(i_3-i_2)、タービンの仕事(i_3-i_4)とすれば、

\displaystyle{\mathrm{AW}{\mathrm{Q}}=\frac{(i_3-i_4)-(i_2-i_1)}{i_3-i_2}}

さらに、給水ポンプの仕事が他の仕事に比べわずかであることから、

\displaystyle{\eta \Doteq \frac{i_3-i_4}{i_3-i_1}}

 

4.再生サイクル

ランキンサイクルでは復水器で冷却水に与えられる熱量が多く熱損失が多いが、蒸気タービン内で膨張する途中を数段に分け、上記の一部をタービン外に抽出して、これをボイラの給水加熱に用いることによってサイクル効率を向上させることができる。この場合の熱サイクルは再生サイクルと呼ばれる。過熱を終わった蒸気は、そのままボイラの給水に混入されるので、この抽出蒸気のもつ蒸発熱および液体熱は回収され、復水器中で失われる熱量がそれだけ減少するわけである。

 

5.再熱サイクル

蒸気タービンに用いられる蒸気は普通過熱蒸気であるが、これがタービン中で膨張すると、次第に飽和蒸気に近づき、さらに膨張を続けると、水滴を含む湿り蒸気になる。湿り蒸気はタービン中で摩擦損失を増し、羽を腐食する不利がある。

このような湿り蒸気をボイラに戻して加熱し、再び過熱蒸気にしてタービンに返し、膨張を続けさせると熱効率を向上することができるとともに、水滴によるタービンの損傷が防げる。このような方法は再熱サイクルと呼ばれる。

また、再熱サイクルは再生サイクルと組み合わせて用いられることが多い。この方式は再熱再生サイクルと呼ばれる。

再熱サイクルと再生サイクルの熱効率を比べてみると理論的には再生サイクルの方が再熱サイクルよりも効率が高いが、蒸気タービンにおいては内部で生じる摩擦損失を考えなければならない。この損失は過熱度の高い再熱サイクルの方が少ないから、再生サイクルによる熱力学的利点と再熱サイクルの損失軽減の両方の長所を生かした再熱再生サイクルが優れている。