水力発電 2.水力発電所の発電方式

(1)構造上の分類

a.水路式

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 自然の河川のこう配をそのまま利用する方式で、河川の1地点で取水し、その河川のこう配より緩やかなこう配の直線的な水路と、発電所の近くで急こう配の水圧間を作り、河川との間の落差を利用する。主要な水の流れは次のとおりである。

取水ダム→取水口→水路→沈砂池→水路→水槽→水圧菅→水車→水車→放水路→放水口

水路式の特徴は次のとおりである。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\,取水ダムは小さくてよいのでダムの建設費が少なく、万一ダムが決壊した場合でもその被害が少なくなる。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 2}\,\,年間の設備利用率が高く、ベース負荷に適している。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\,発電量は河川流量に左右され、発電所の出力はダム式に比べ大きくできない。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 4}\,\,水車や発電機の停止時や洪水時には無効放流 (発電しない放流)となる。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 5}\,\,長い水路、沈砂池、調整池、水槽などを設けなくてはならなく、これら設備の点検保守に手間がかかる。    

 

b,ダム式

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 河川の幅が比較的狭い地盤の堅固な場所を選び、河川を横切ってダムを築き、水位を高くして落差を得る方法である。ダム式の特徴は次のとおりである。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\, 取水ダムが大きいので、発電量は河川流量に大きく左右されなく、無効放流もほとんどない。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 2}\,\,発電所の出力を大きくとることができるので、ピーク負荷に適する。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\,多目的ダムとして洪水調整や工業用水、農業用水など広範囲に使用できる。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 4}\,\,長い水路、沈砂池、水槽などを設ける必要は無い。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 5}\,\,ダムの建設に多額の費用と長い工期を要する。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 6}\,\,ダムは下流の環境に大きな影響を与えないよう運用する必要がある。

 

c.ダム水路式

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水路式ダム式の混合であってダムによって落差を作り、さらに水路によって落差を大きくする方式である。

ダム→取水口→導水路→サージタンク→水圧菅→水車→放水路→放水口

 

(2)機能上の分類

発電方式を機能によって分類すると、次の四つになる。

a.流れ込み式 河川流量を調整する池をもたず、自然流量に応じて発電する方式で豊水機に無効放流を生じ、河川の利用度が低い欠点を持っている。

b.調整池式 貯水池より小さい調整能力をもち、池容量が日間あるいは週間調整を行うことのできる方式である。

c.貯水池式 河川の季節的な流量変化を年間あるいは月間にわたり調整する池容量をもつ発電方式で、豊水期に水を貯え、主として渇水期に発電する方式であり、河川の利用度が高い利点を有する。

d.揚水式 深夜あるいは週末などの軽負荷時の火力・原子力発電の余剰電力を利用し、下部貯水池の貯留水をポンプによって揚水して上部貯水池に貯水し、ピーク負荷時に上部貯水池の水を放水し、水車によって発電する方式である。

 

(3)形式上の分類

発電所の形式によって部類すると地上式と地下式に大きく分けられ、さらに建物の形状によって、屋内式、半屋外式、屋外式に分けられる。わが国では以前は地上式が多かったが、近年大規模の地下空洞を作る技術開発に成功したこともあり、新しく建設される大養老発電所は大部分地下式となっている。また、建物形式としては大部分が屋内式であり、半屋外式および屋外式は比較的少なく、雨量の少ない地方の小容量発電所にまれに採用されている。