水力発電 5.放水路・水槽およびサージタンク

・放水路

水車から放出される水を再び河川に導くための水路は放水路と呼ばれ、その河川への出口は放水口と呼ばれる。

放水路は洪水時でも水車の制限水位以上に放水位が上昇しないようにすることが必要である。地形に応じ、開きょ、トンネル、暗きょなどが用いられる。

放水口は洪水時にも工作物が破壊されるおそれがなく、土砂で埋没することがなく、また放流水が河川の流心に衝突しない位置を選ぶことが必要である。

・水槽およびサージタンク

水路式発電所で自然流下式水路が用いられている場合は、導水路の末端に水槽を設け、水路から流入する土砂を沈殿させ、浮遊物を取り除いた水を水圧菅に送るとともに、発電所の負荷が急増したとき、一次この水槽内の水で水路からの流量不足を補う。また、負荷が急減したとき、水路から引き続き流入してくる水を水路外に放流して、水位の急上昇を押さえることによって、トンネルでは水圧が加わることを防ぎ、また開きょでは越流して付近を損傷しないようにするため余水吐を設ける。

貯水池や調整池から水圧菅までの間が圧力水路で接続されている発電所の場合は、負荷の急変に即応して流量を変えることができ、また水路に水圧が加わっても、これに耐える構造に造られている。しかし、後で説明するように、発電所の負荷の急変に伴って異常水圧を緩和するために、水槽と類似の形を持ったサージタンクを水路と水圧菅との接続点に設ける。

 

水槽は、養老の大きいことが望ましいが、多くの場合、発電所の直上で十分な面積を得にくい場所に設けれれているので、地形に応じてさまざまな形に造られる。

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 水槽の水路および水圧菅との接続点では、流水による渦が生じない形状にし、池の底面は排砂門に向かって適当なこう配をつけて土砂の排出を有効にするとともに、沈殿した土砂や水圧菅に流入しないような構造にする。制水門にはスルースゲートやローラゲートが用いられることが多い。

水圧菅の入り口は、水槽の最低水位よりも十分に低くして、吸い込みに伴う渦によって空気を吸い込まないようにしている。

a.ヘッドタンク

無圧式の水路の末端と水圧菅の間にヘッドタンクを設ける。ヘッドタンクは発電所の出力変動による水の過不足を一時的に調整し、流水中の土砂をさらに沈殿させ、講師を設けてじんかい、木片、氷雪などを取り除くために設ける。出力を抑制した場合は、余った水をヘッドタンクに設けた余水吐きから放出する。ヘッドタンクの容量は少なくとも導水路の補給なしで最大使用流量の2\sim 3分間の大きさとすべきであり、大容量のものは調整池として用いられるものもある。ヘッドタンクは水圧菅に直結されているので、山の突端か山腹など十分な場所のない所に設置されることが多い。このため、地形、地質を十分考慮して山崩れ、なだれ、地震、漏水などに対しても十分安全なように造る必要がある。

b.サージタンク

ヘッドタンクまでの水路が圧力トンネルで、それが長い場合、ヘッドタンクの代わりにサージタンク(長圧水槽)を設ける。水車の使用水量が急変したときに発生する水圧変化を吸収して、水路および圧力トンネルを守るのがこのタンクの役目である。