水力発電 4.水路

取水口から取水された水は、水路を通って水槽に導かれ、水圧菅を経て水車に供給される。使用後の水は、放水路を通って再び河川に放流される。これらの工作物のうち、取水口の直後から水槽の入り口までは導水路と呼ばれ、地形および発電所の規模によってさまざまな構造のものが用いられる。

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 水路は所要の流量を安全に通すだけでなく、落差損失ができるだけ少なく、地震、地滑り、なだれなどの被害を受けることなく、また漏水や破壊を生じることなく、土砂、落葉など遺物が入り込むことの内容配慮されている。

水路中の流速を大きくすると、断面積が小さくても同じ通水量とすることができて、工事費を節約することができるが、一方、摩擦損失などの損失落差が大きくなり、発電利用可能な落差が小さくなるため発電力が減少することになる。そのため、流速の変化による工事費の増減との両方を比較して最も経済的な流速を決定しなければならない。

自然流下式の水路内の流速は一般的に2 \sim 2 \mathrm{m/s}程度が適当とされ、水路のこう配は通常1/1000 \sim 1/400とし、流速は最大使用量のときに3 \sim 5 \mathrm{m/s}の設計にするが、流量が減少すれば、流速はこれに従って小さくなる。自然流下式水路においては、流量が変わっても流速には大きな変化はないが、圧力トンネルにおいては、負荷の急変に応じ流量を急速に増加すると動水勾配が大きくなって流量が増加する。

・水路の種類

a.トンネル トンネルはほかの水路に比べて、単位長さ当たりの建設費が高く、内部の点検が不便であるが、水路の長さを最も短くでき落差損失が少なく、外部から障害や異物の混入する心配もない利点がある。

トンネル上部に空間を残して、水が自然流下するものは無圧トンネルと呼ばれる。断面内に水が充満し、断面の上部まで圧力の加わるものは圧力トンネルと呼ばれる。

b.開きょ 開きょは地盤を掘削して築造される。その内面には石張りあるいはコンクリート張りを施す。比較的簡単な工作物であるから、単位長さあたりの建設費が安く、工期も短いが、トンネルのように山地を直線的に通過することはできないので、山腹などを等高線に沿って回るため水路の長さが増加し、損失落差も多くなる。また、土砂、落葉などの混入する機会も多い。

c.暗きょ トンネルとするには上部の土被りが薄い場合、あるいは、くぼ地や谷川の下をつうかするときなどには暗きょが用いられる。これは開きょと同様に地表から掘削して施工し、覆工を終わった後埋め戻すもので、断面の形状はトンネルに近く、鉄筋を入れる場合もある。

d.逆サイホン 水路が谷、道路、鉄道などを横断する場合には、逆サイホンが用いられる。コンクリート管が用いられることもあるが、高低差の大きい場合は鉄管が用いられる。入口には簡単なタンクと制水門を設ける。

e.水路橋 地形によっては水路橋が用いられる。水路橋は、鉄筋コンクリート橋あるいは鉄橋の上に、鉄管、鉄筋コンクリート管あるいは鉄筋コンクリートの開きょを乗せた構造のものが多い。

f.とい・水路管 流量の少ないすいろには、といや水路管がもちいられることがある。といの材料には、木材、鉄筋コンクリートまたは鋼板などを用いる。これは、長方形または半円形断面に作られ、地上に敷設され、または受台で支持される。水路管は同様の材料で円形断面に作られ、地中に埋設、あるいは受台で支持される。