2018年電験1種 電力問6

送電線に発生する雷過電圧の原因としては、雷しゃへい失敗による電力線への直撃雷や、鉄塔あるいは架空地線に落雷が発生し鉄塔と電力線との電位差で生じる逆フラッシオーバによるものがある。この他に、誘導雷による雷過電圧があり、雷雲から反対極性の電荷が送電線路に誘起され、雷雲の放電に伴い、送電線路上の電荷は拘束を解かれ、進行波となって線路上を伝搬する。

送電線に現れる雷過電圧の波形は千差万別であるが、試験規格においては雷インパルス耐電圧試験の波形を一義的に統一し、標準波形と称している。標準波形はJEC-0202(1994)「インパルス電圧・電流試験一般」に規定されており、正、負の極性とも波頭長は1.2\mu \mathrm{s}、波尾長は50\mu\mathrm{s}が採用されている。雷インパルス耐電圧試験においては、高電圧のインパルス電圧を発生させるため、一般に多段式のインパルス電圧発生器が用いられる。その方式の一つに多数のコンデンサを並列状態で充電し、直列状態にして放電させるものがある。印加電圧の波形は、供試物との回路に直列に接続する制動抵抗、並列に接続する放電抵抗、波形調整用コンデンサ及びリアクトルによって調整する。

【解説】

送電線に発生する過電圧には、その原因が外部にある外部過電圧と系統の内部にある内部過電圧とに大別される。このうち外部過電圧の原因には、直撃雷、逆フラッシオーバ、誘導雷がある。

直撃雷は、雷しゃへい失敗により送電線路に直接落雷することで、それによる異常電圧が線路上を伝搬する。逆フラッシオーバは、鉄塔頂部または架空地線に落雷した場合、鉄塔の接地抵抗と雷電流との積に起因する鉄塔の電位上昇が起こり、架空地線と電力線間またはがいし装置のアークホーン間でフラッシオーバを生じ、電力線に雷電圧が侵入することで、送電線に異常電圧を生じる。また、誘導雷は、送電線路の上空に接近した雷雲からの静電誘導によって送電線路に拘束された雷雲とは逆極性の電荷が、雷雲の放電によって拘束を解かれ自由電子になって送電線路を進行波となって伝搬するものである。

送電線に現れる雷過電圧の波形は千差万別であるが、雷インパルス耐電圧試験においては規格で雷インパルス試験電圧の波形を一義的に統一する必要があり、JEC-0202(1994)「インパルス電圧・電流試験一般」に規定された波形を標準波形として試験を行うこととしている。

波頭における30%波高点と90%波高点とを結ぶ直線が時間軸と交わる点を規約原点、この両点の間の時間を0.6でじょしたものを規約波頭長という。

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通常、極性は正、負とも波頭長1.2\mu\mathrm{s}、波尾長50\mu\mathrm{s}が採用されており、裕度として波頭長\pm 30 \%、波尾長\pm 20 \%が認められている。波形の表示は\pm T_1 / T_2 [\mu\mathrm{s}]のように表示することとしており、標準波形は\pm 1.2 / 50[\mu\mathrm{s}]となる。

雷インパルス耐電圧試験においては、高電圧のインパルス電圧を発生させるため、一般に多段式インパルス電圧発生器が用いられる。インパルス電圧は、コンデンサに充電した電荷をギャップを通して適当な波形調節回路に放電することによって得られ、1個のコンデンサの充電電圧には限界があるため、高電圧のインパルス電圧を発生するためには多段式のインパルス電圧発生器が用いられる。