状態方程式における安定性2

定義

\pmb{x}'(t)=\pmb{Ax}(t)+\pmb{b}u(t)

において\pmb{x}(0)=0とする。適当な定数k_1に対して

|u(t)|\leq k_1 ,\forall t \geq 0

ならば、もう1つの定数k_2が存在して

|y(t)|\leq k_2 ,\forall t \geq 0

のとき、システムは有界入力有界出力(BIBO)安定という。

 

定理

システムがBIBO安定であるための必要十分条件は、そのシステムの伝達関数

\displaystyle{G(s)=\frac{Y(s)}{U(s)}=\pmb{c}^T (s \pmb{I}-\pmb{A})^{-1}\pmb{b}}

の極がすべて負の実部をもつことである。BIBO安定性は先に述べた古典制御の安定性に等しい。

 

証明

(必要性)

\pmb{x}'(t)=\pmb{Ax}(t)+\pmb{b}u(t)

y(t)=\pmb{c}^T\pmb{x}(t)

システムがBIBO安定であると仮定する。

このシステムのインパルス応答をg(t)で表すことにする。

g(t)=\mathcal{L}^{-1}[G(s)]=\pmb{c}^T\mathcal{L}^{-1}[(s\pmb{I} - \pmb{A})^{-1}]\pmb{b} = \pmb{c}^T \exp(\pmb{A}t)\pmb{b}

と書ける。また、入力u(t)に対する出力は

\displaystyle{y(t)=\int_0^t g(t-\tau)u(\tau)d\tau}

u(\tau)

u(\tau)=\mathrm{sgn} g(t-\tau)

とする。ただし、

\begin{equation} \mathrm{sgn}\, x = \left\{ \begin{array}{rl} 1, & x \gt 0 \\ 0, & x=0 \\ -1, & x \lt 0 \end{array} \right. \end{equation}

明らかに、|u(\tau)| \leq 1 である。

仮定により適当な正数K_2に対して|y(t)| \leq K_2 , \forall t \geq 0であるから

\displaystyle{ K_2 \geq |y(t)| \geq y(t) = \int_0^t g(t-\tau)\mathrm{sgn}\, g(t-\tau) d\tau \\= \int_0^t |g(t-\tau)|d\tau = \int_0^t |g(\tau)| d\tau, \forall t\geq 0}

したがって、

\displaystyle{\lim_{t \to \infty} g(t)=0}

となる。これから、G(s)の極はすべて左半平面にある。

 

(十分性)

G(s)の極がすべて左半平面にあれば

\displaystyle{\lim_{t \to \infty} g(t)=0}

が成立する。g(t)k_j t^j \exp(\lambda t)

の形の項の和であるから、適当な正数M,aが存在して

|g(t)|\leq M \exp(-at),\forall t \geq 0

が成り立つ。したがって|u(\tau)\leq 1 ならば

\displaystyle{|y(t)|\leq \int_0^t |g(t-\tau)||u(\tau)|d\tau \leq \int_0^t M \exp(-a(t-\tau))d\tau \\ = \frac{M}{a}(1-\exp(-at)) \lt \frac{M}{a}, \forall t \geq 0}

を得る。ゆえに定義よりBIBO安定である。