安定性3 代数的安定判別法1

プロパーな有理伝達関数をもつシステムが安定であるかどうかを判別するには、システムの極の実部が正負であるかどうかを調べればよい。伝達関数の分母多項式を0とおいた式、特性多項式の根の実部の正負を調べればよい。以後、実部が負であるような根を安定根と呼ぶ。ところが、5次以上の方程式には解の公式は存在しないので、特性多項式の次数が大きくなるにつれて、実際に極を求めた上で安定性を判定するのは困難になる。

このような困難を避けて根を算出することなく安定性を判定する方法が知られている。代数的な方法としてRouthの方法とHurwitzの方法がある。また、フィードバックループを持つ制御系の安定性を判定する方法として、Nyquistの方法が知られている。

まず、代数的判別法について説明する。

準備として代数方程式の全ての根の実部が負であるための一つの簡単な必要条件を与える。

 

定理

D(s)=a_n s^n + a_{n-1} s^{n-1} + \cdots + a_0 = 0\tag{*}

の根がすべて安定根であるためには、その係数a_n,a_{n-1},\ldots,a_0がすべて同符号でなければならない。

 

証明

(*)の根をp_1,p_2,\ldots,p_nとすると

D(s)=a_n(s-p_1)(s-p_2)\cdots(s-p_n)

と表せる。すべて安定根であるとする。根p_iが実根の場合、p_i=-\alpha , \alpha \gt 0と表せるから(s-p_i)=(s+\alpha)は正係数の1次多項式であり、根p_ip_{i+1}=\overline{p_i}が複素根の場合はp_{i+1}=\overline{p_i}=-\beta +\sqrt{-1}\gamma, \beta \gt 0, \gamma \ne 0であるから、(s-p_i)(s-p_{i+1})=(s^2+ 2\beta s + \beta^2 + \gamma^2)は正係数の2次多項式である。

係数が全て正の多項式同士の積はまたその全ての係数が正の多項式となる。したがって、D(s)の係数は全て同符号でなければならない。