2018年電験1種 法規問4

再生可能エネルギーを電気に変換する方法としては、太陽光発電風力発電水力発電地熱発電バイオマス発電などの発電方式が実用化さえており、再生可能エネルギーの導入拡大によるエネルギーの安定供給の確保や地球温暖化対策の強化などを目的に、2012年7月から再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートした。

地熱発電は、地下から噴出する蒸気又は熱水を利用して汽力発電を行うもので、地下からの上記などを直接タービンに入れる場合と、熱交換機を通して発生させた蒸気をタービンに入れる場合とがある。後者は蒸気に含まれるガスや不純物によるタービン内の腐食対策として有効である。また、地熱資源の枯渇を防止するため、使用済み蒸気の地中還元も行われている。

2016年6月現在、アメリカ、フィリピン、インドネシアなどの諸国を中心に世界で約1300万kWの地熱発電設備が稼働中であり、日本では約50万kWの設備が稼働している。

地熱エネルギーの利用を一層推進するため、開発リスクの低減を目指した地熱貯留層の探査技術、掘削技術及び評価・管理技術の技術開発、未利用の温泉熱を利用する低温域でのバイナリー発電システム開発、次世代の方式として超臨界地熱発電の熱抽出に関する実現可能性調査等が進められている。

【解説】

地熱発電は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度の対象である。この制度は、長期間、固定価格での電力の買取を保証することで設備投資の回収を確実にし、設備の導入を促進する制度である。地熱発電15000\mathrm{kW}以上の設備は26円/kWh、15000\mathrm{kW}未満は40円/kWhの15年間の買取が保証されているが、この価格は制度導入時から2018年度現在まで変更されていない。

地熱発電には、地下からの上記を直接タービンに入れる方式と、熱交換機を通じて発生した蒸気をタービンに入れる方法がある。前者が主流であり、さらに次の3方式に分類されるが、日本ではシングルフラッシュ方式が大多数を占めている。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 1}\,\,ドライスチーム方式:地熱を得る生産井から乾燥蒸気のみが得られる場合、岩片などスケール成分を分離するだけで直接タービンを回す方式。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 2}\,\,シングルフラッシュ方式:生産井から蒸気と熱水が同時に得られる場合、気水分離器(セパレーター)を通じて蒸気を分離してタービンを回す方式。

 \bigcirc\!\!\!\! {\scriptsize 3}\,\,ダブルフラッシュ方式:気水分離器で蒸気を分離してタービンを回し、残った熱水をフラッシャーで減圧膨張させて低圧蒸気を得て、さらにタービンを回す方式。

 

後者の熱交換機を通じて発生した蒸気を発生させる方式の一種にバイナリー発電がある。2次側媒体に沸点が低い水とアンモニアの混合物やペンタンなどを使う方法で、従来は利用できなかった150^\circ\mathrm{C}]以下の低温の熱水でも発電が可能となる。そのままでは入浴に適さない高温の温泉水をバイナリー発電で冷却し、温泉に利用できるようにする方法も開発されている。

地熱発電の日本での導入量は2016年で約52万kWで、固定価格買い取り制度による支援により小規模なバイナリー発電を中心に少しづつ普及拡大している。

地熱発電では、熱水に含まれる腐食成分やスケールの生成に特に注意が必要となる。腐食成分に対しては、部品の早期取替やステンレスなど耐腐食性金属の使用、薬剤によるPH調整などで対応する。スケールについては、熱水温度が低下した際に生成するシリカ系のスケールが還元井周囲の目詰まりを生じさせることも問題で、定期的に還元井を再掘削することも必要となる。

また、いずれの地熱発電方式においても地熱資源の枯渇防止のため、使用済み蒸気の地中還元が行われることが多い。

 

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