
フィードバック制御系のブロック線図において、前向き伝達関数、フィードバック伝達関数
はともに安定な特性を持つものと仮定しておく。このブロック線図は入力信号を0とみなすと、

と表現することができる。さらにA点でループを切り開くと

となる。この図において新たにA点を入力端とみなし、この点へ正弦波入力を印加すると、

このようなブロック線図によって求めることができる。とくに一巡伝達関数の周波数応答
のことを一巡周波数応答と呼んでいる。
与えられた系についてこの一巡周波数応答のベクトル軌跡を描いたところ

図のような結果が得られたものとする。このベクトル軌跡は、入力正弦波の角周波数が
のとき
の点を通ることに特に注意する必要がある。この
のときの一巡周波数応答を求めると、
振幅比が1で入力信号に対し、位相差が
となる。したがって、A点に入力信号
を印加したとき、B点における信号
となることがわかる。A'点の信号[z(t)=\sin \omega_0 t]となり、結局A点に印加した入力信号
と全く同じ信号が得られたことになる。この信号
を
の代わりにA点から入力信号としていれてやると、すなわちA点とA'点とを結んで再び閉ループ系を作ると以後外部から信号を加えてなくても、A点には周波数
の一定振幅の振動が無限に続くことがわかる。
以上のことを前提にして、一巡周波数応答のベクトル軌跡が

図の曲線のように
で実実情で
より左側の点、
としたとき
の点を通過する場合を考える。このときA点の信号を
とすると、B点の信号は
となり、A'点の信号
となることがわかる。ここでであるため
はもとの信号
に対して
倍に拡大された値になっている。このとき、A点とA'点を接続して閉ループ系を構成すると、
の角周波数をもつ正弦波の振幅は一巡する毎に
倍にかくだいされていき、ループ内の信号は時間とともにますます増大していくことになる。このような場合、フィードバック制御系はもはや安定な動作を行うことができない。これがフィードバック制御系の不安定な状態である。
また逆に、一巡周波数応答のベクトル軌跡が図の曲線
のように
において、実軸上
よりも右側の点を通過する場合、A点に
を印加すると、A'点の信号
となり、倍に縮小されることになる。したがって、このような場合、閉ループを形成し、A点での信号は一巡すると
倍に縮小していくため、時間の経過とともに消滅していくことがわかる。この状態のとき、フィードバック制御系は安定であるということができる。
以上述べた考え方にもとづくフィードバック制御系の安定判別法を一般にNyquistの安定判別法といい、実際によく用いられている。
Nyquistの安定判別法を要約すると、次の順序したがって検討していけばよい。
(1)与えられたフィードバック制御系において、一巡周波数応答を求める。
(2)を複素平面に描くことによりベクトル軌跡を求める。
(3)ベクトル軌跡が負の実軸を横切るときの左側を通る場合、与えられたフィードバック制御系は不安定な系である。これに対して、右側を通る場合安定な制御系となる。
一巡周波数応答のベクトル軌跡が1次遅れ要素のベクトル軌跡、もしくは2次遅れ要素のベクトル軌跡となる場合、これらのベクトル軌跡はこれらのベクトル軌跡は第2象限には入らないため、の左側で負の実軸と交わることは起こりえない。したがって、この場合、フィードバック制御系は常に安定である。
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