体は,とする。を次元線形空間とする。で固有値の次のJordan細胞を表す。
\begin{equation}
J_1(\lambda) = \begin{pmatrix} \lambda \end{pmatrix},
J_2(\lambda) = \begin{pmatrix} \lambda & 1 \\ 0 & \lambda \end{pmatrix},
J_3(\lambda) = \begin{pmatrix} \lambda & 1 & 0 \\
0 & \lambda & 1 \\
0 & 0 & \lambda
\end{pmatrix}
\end{equation}
命題 冪零変換のJordan標準形の存在
をなる冪零変換とする。このとき、の基底でのにおける表現行列がJordan行列であるものが存在する。
証明
ならの任意の基底に対しはJordan標準形であるからとする。
次元に関する帰納法を用いる。のときの任意の基底に関してはJordan標準形である。として次元以下で成立すると仮定する。
より、かつなるを一つ固定する。
するとは一時独立である。実際、
にをかけると、からとなって、。よりをかけると、となって次々と
\begin{equation}
c_1 = c_2= \cdots = c_k = 0
\end{equation}
が得られる。
の張るの部分空間
とすると、である。
\begin{equation} = (T^{k - 1}e, T^{k - 2}e, \ldots , Te , e) \times \begin{pmatrix}
0 & 1 & & & 0 \\
& 0 & 1 & & \\
& & \ddots & \ddots & 1\\
0 &&&& 0
\end{pmatrix}
\end{equation}
すなわち、の制限の基底に関する表現行列はである。ゆえにならばで命題の主張は成立しているのでと仮定する。
の不変部分空間でとなるものの内(これは必ず存在する。例えば)で最大次元のものをとる。が成り立つがこれを背理法により示す。
と仮定する。をとる。
またより、であるから、
この等式の両辺にをかけるとより
かつでは不変と仮定してあるから、さらにと仮定しているから。
とおくと、
であるが、もしもならばとなっての選び方に反するから。
との張る空間をとするとで、は不変である(の取り方より。また、なので)。
とすると、であるからと書けるから、だから。
よってとなりが成り立つ。これはが最大次元であることに反する。したがって、。
であるから、となる。帰納法の仮定によりであるからの適当な基底に関するの表現行列はJordan行列である。の基底とこのを合わせて作った表現行列はJordan標準形である。
Jordan標準形の存在の一意性定理については斎藤正彦先生の線型代数演習が非常にコンパクトです。おすすめです。